昨日、カナダ大使館のオスカー・ピーターソン シアターにて開催された「Nuendo 8説明会」にお邪魔してきました。
近年、カナダの会社でゲームオーディオのミドルウェアであるWwiseを開発しているAudiokinetic社と、YAMAHA/Steinberg Nuendoが、Game Audio 関連で密接に連携している事もあり、Nuendo 8とWwiseの連携を含めてカナダ大使館で行われる事が多いです。といっても、2回目かな?w
詳しい記事はこちらがよいかと。
OM FACTORYの大島su-keiさんと、声優でDTMにもかなり造詣の深い小岩井ことりさんが登壇し、Nuendo 8の説明をしてくれました。大島さんの説明がめちゃめちゃ上手くて、聞き惚れてしまいました。すんごいわかりやすくて、いやこれは欲しくなるわ~w
渡辺寛永志さんの「東京喰種 トーキョーグール」のセッションや、FF14のトレーラームービー「ファイナルファンタジーXIV MEMORIES」のボイス収録時のお話など聞けてとても楽しかったです。FF14のトレーラーはめっちゃ胸アツなので必聴です。
ダイレクトオフラインプロセッシング
これはオフラインプロセッシングを、更に一歩進めた感じの機能でめちゃめちゃイイです。
今まではトラック単位でインサーションエフェクトをかけて作ってた音作りを、イベント単位でインサーション・エフェクトかけるような感覚です。実際にやってるのは非破壊のオフラインプロセスなんですが、もう感覚的にインサーションと変わらないです。
先日も某テーマパークの施設内で使用する動画のボイスエディットをしたんですが、とあるワードや語尾にだけ特殊な加工を施したい場面が出てきました。私の場合は下記のようにトラックをまずDuplicateして、特殊加工したいワードだけ抜け出して、複製したトラックにイベント置くという事をしています。そん時に「ダイレクトオフラインプロセッシング」があればだいぶ楽にできたなーっと……。
チャンネルを分けるのは、これはこれでオペレーション的にわかりやすく合理的でもあるんですが、インサーション・エフェクトの多重起動によるCPUコストの問題や、インサーション・エフェクトの変更が入った時に両方弄る必要などが出てきます。オートメーションの連続性という意味でもちょっとややこしい。コピーやQ-Link使ってもいいんですが。
インサーションをガッツリかけたトラックを複製するとなるとCPUコストや、後の編集で煩雑になることも……。それが嫌で結局、グループチャンネルを新たに作って、チャンネルのインサーションをグループチャンネルに移動してまとめるなんて作業も少なくありません。「ダイレクトオフラインプロセッシング」を上手く使えばそういった作業も減らせる気がします。
こういった作業の時にとても便利に思えます。「ダイレクトオフラインプロセッシング」は再生時にリアルタイムに処理するわけではないので、負荷も軽減させる事ができます。
インサーション・エフェクトで音をエディットする時と違い、波形表示もすぐに変わってくれるのも便利です。ボイスは、言葉や語気などによって、流れでツルッと録音した場合でも結構個別にエディットが必要になるので、便利な機能だと思います。各波形レベルで「ダイレクトオフラインプロセッシング」機能を使って整えておくと、チャンネルでの音の作り込みもやりやすくなります。
ランダマイザー・エフェクト
これは音を再生させる毎にランダムに「音量」「ピッチ」を変えてくれるというエフェクター。これの特徴は、詳しいロジックは聞いてないけど、イベント単位で変わってくれる点にあります。例えば、一般的なモジュレーション系エフェクターって、一つの波形の再生途中でもうねうねうねったりしますよね。
でもこいつは、一つのイベント毎にランダムな感じにしてくれるので、例えば銃声みたいな効果音を一つ用意すれば、いい感じにちょっとづつ違った効果音のバリエーションが作れちゃうわけです。ちょっとした違いはあるけど、だいたい同じというツボを付いたサウンドを作れます。こうれはもう超絶便利。
ADR
映像にセリフをオーバーレイできる機能です。これまた便利。台本を持ってセリフを収録してもらうより、映像の演技を見ながらアテレコできるのでボイスアクターさんもやりやすいし、ボイスディレクションする側もやりやすいと思います。
特に声優さんのように、普段アフレコ/アテレコに慣れてる人ならいいけど、やはりそうじゃない演者さんもいるのでそういう人にはとても便利だと思います。どのくらいの長さで、どのタイミングでというもNuendo8のADR機能を使ってお知らせする事ができるので、レコーディングがスムーズです。
時間がカツカツになりがちなコンペのデモで、仮歌入れるときにも使えると思います。
イマーシブ・オーディオ対応
Dolby AtmosやAuro3Dなどのイマーシブ・オーディオにも対応。フォーマットとして対応したのがでかいですかね。ゲームサウンドに限って言うと、3Dゲーム登場時からイマーシブ・オーディオで制作していたといっても過言ではないので、概念的にはそれほど新しいものではありません。
ただ、スピーカーレイアウト的にも上下の概念が出てきたので、従来の平面的なパンナーを使ったチャンネルベースのパンナーでは限界があります。プレイヤー位置が固定されているようなカットシーンの場合は、仮想的に高次Ambisonicに変換してエクスポートできてもいいとはおもうんですがどうなんでしょうね。
Nuendo 8 クロスグレードキャンペーン
CubaseユーザーとProToolsユーザーに対するクロスグレードを準備しているそうです。私はNuendo 1〜3まで使っていて、その後は結局Cubaseに戻ってしまいました。その理由が、Nuendoの価格高騰もあったんですが、NEKというCubaseのような作曲機能が別売りになった事が大きかったです。
しかし今回のNunedo 8は、NEKが統合され完全にCubaseの上位版という位置づけになります。なので万能に使えます。
私のまわりでは、ProToolsからのクロスグレードがインパクトがでかくかなり興味を持った方が少なくなかったです。ProToolsは大抵持ってるので、対象の人はかなり多いです。値段が気になるところですが……。
地味だけどQuickTime に依存しない新たなビデオエンジンを搭載
QuickTimeのWindows版のサポートが打ち切りになりました。それに伴いNuendo 8では独自のビデオエンジンになったようです。これはすごくありがたいことです。Windowsユーザーは動画のフォーマットに困ることがなくなるということで大いに期待です。
ここまで来たら、あとはビデオトラックでちょい編集した動画と、音声トラックを同時にエクスポートして、音声つき動画としてエクスポートする機能ですね。これは各所からかなり要望として挙がっているはずなので今後に期待したい……です。これができれば、脱ProTools出来る人もいるはず。
おまけWwise + UE4
WwiseのUE4のデモも展示されました。UE4へWwiseインテグレートされたデモプロジェクトですが、今回ついにAudiokinetic Textureといって、壁の材質などを登録できるようになりました。これによって反射やオクルージョンをシミュレートできそうです。
中身はShareSetになっていて、パラメトリックEQの設定ができるようです。ちゃんと設定していこうとなると大変そうですが、その分クォリティあがるといいなって思います。UE4のマテリアル設定と統合できてると、サウンドデザイナーがいちいちAudiokinetic Textureを設定しなくても、グラフィックデザイナーが各オブジェクトへのマテリアルの設定すれば勝手に材質に応じた音になってくれそうです。
そこまではまだ出来ないのかなあ。まだ触ってないので今度触らせて貰おうと思います。まあでもモデルデータの厚さとかね……考え出すとまだまだやれそうな事はありますね、この分野は。